違法にならない退職勧奨の方法
昨年に引き続き、2021年も新型コロナウイルスの影響による経済的打撃が懸念されます。
先行きの不安なこの1年間で、経営不振により人材コストの削減に取り組む企業が増加しました。
それに伴い、離職率の急増だけでなく、早期・希望退職を実施する企業が目立つことも、大いに話題になりました。
しかし、退職は従業員にとって非常に重大な問題です。違法な退職勧奨により、強制的に退職させるといった行為は、後々トラブルに発展するおそれがあります。
企業としては、適切な退職勧奨を行うことで、そのようなトラブルを未然に防止することができます。
そもそも退職勧奨とは、企業が従業員に対して退職を勧めることを指します。これは、あくまで従業員に自主的な退職を促すものであり、解雇と異なり退職勧奨に法的効力はありませんから、退職勧奨を受けたとしても、実際に退職するかの判断は従業員自身に委ねられています。そして、企業はいつでも退職勧奨をすることが可能です。ただしその方法に問題があれば、「退職強制」、すなわち違法な行為であると判断され、企業側が賠償責任を負う場合があるため注意を要します。
違法な退職勧奨行為とされるケースとしては、過去の裁判例から、①社会通念上相当な程度を超えるほどに不当な心理的圧力を加える行為、②名誉感情を不当に害する言動を用いる行為や、③退職する以外に方法は無いと従業員に誤認させる場合、がこれにあたるとされています。
具体的には、
・従業員が明確に退職を拒絶しているにもかかわらず、多数回・長時間にわたって執拗に退職を要請する行為
・退職させるため、無視・暴力行為・仕事差別・嫌がらせなどをする行為
・退職させるため、業績が上がらないよう一人部屋に隔離したり、逆に過酷な業務を割り当てる行為
・退職させるため、他人の前でひどく叱責・罵倒するなどして心理的圧迫を加える行為
・給料を大幅にカットする/解雇の該当事由がないにもかかわらず自主退職しなければ懲戒解雇をする、といった発言をすることで、実質的に自主退職を強いる行為(強迫行為を含む)
などが挙げられます。
退職勧奨の際には、以上を参考に、
・従業員の退職拒絶意思が明らかであるときは、それ以上執拗に退職を勧めない
・面接を行う場合は個別で短時間にし、多数回行わない
・威圧的・名誉を棄損するような言動は使用しない
・従業員へ退職を余儀なくさせるような不利益行為は行わない
といった点に注意してください。
退職にまつわるトラブルは、企業のイメージを毀損しかねるため、慎重な対処が必要です。退職勧奨などをご検討の際には、一度弁護士にご相談ください。
弁護士 熊谷博幸(飯野・八代法律事務所)は、東京都を中心に、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県にお住いの皆様から、企業法務、労働法務(使用者側)、不動産、一般民事・家事にかかるご相談を承っております。お困りのことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。
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