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企業が取り組めるハラスメント防止対策/弁護士 熊谷 博幸

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企業が取り組めるハラスメント防止対策

近年では、コンプライアンスの重視に伴い、ハラスメントが問題視されるようになってきました。また、2019年に厚生労働省が「職場におけるハラスメント関係指針」というガイドラインを作成し、2021年6月1日より職場のハラスメント対策の義務化が決定されました。このように、法律によりハラスメント対策が義務化される中で、企業も職場内における様々なハラスメントに、どのように対処すれば良いかを考える必要が出てきています。

 

ハラスメントと一口に言っても、様々な種類のものがあります。セクシュアルハラスメント(セクハラ)は問題視されて久しいですが、パワーハラスメント(パワハラ)やモラルハラスメント(モラハラ)など、セクハラとは異なるタイプのハラスメントも近年では問題視されるようになってきています。

 

法律上、セクハラを直接定義した規定はありません(パワハラの定義も法律上はありません)。しかしながら、男女雇用機会均等法11条1項には、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とあります。つまり、ここでセクハラは「職場において行われる性的な言動」に対する労働者(言われた側)の対応により、職場の労働条件に不利益を受けたり就業環境が害されることをいいます。

 

上の定義に当てはまるセクハラを行なった労働者(加害者)には、国ではなく企業(事業主)が、基本的に自主的解決をしていく必要があります(男女雇用機会均等法15条)。セクハラを放置したままであると、職場内の規律・精神環境が害されるため、企業としても加害者に対して懲戒処分等の厳格な対応をなす必要があります。ただ、事実確認を怠ってはならないことは明らかです。
また、事業主はセクハラを防止するような研修の実施、その他の必要な配慮を講ずる努力をしなければなりません(同法11条の2第2項)。

 

セクハラに加え,パワハラ(モラハラ)も近年問題視されるようになってきました。パワハラの具体例としては、陰口・悪口や職場内で特定の社員を孤立させるような行為をあげることができます。また、退職勧奨そのものは違法な行為ではないですが、過度な退職勧奨はパワハラとして認定される可能性があります。

 

以上のようなハラスメントが生じた際に、企業はどのように対応すれば良いのでしょうか。それは第1に、定期的に企業がハラスメント防止に関する啓発講座を設けること、第2に、企業がハラスメントに関するオープンな相談窓口を設けること、そして第3に、透明性を保持しながらハラスメントの相手の事情を聞き公平に厳重注意・謹慎処分・解雇などの処分決定を行うことが対処法になると考えられます。

 

円満な解決を図るためにも、上記の対策をしっかりとしておくことが重要です。会社が主体的にハラスメントをなくそうと動かなければ、ハラスメントは消えません。

 

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共著『詳解 働き方改革関連法』労働開発研究会 2019年7月

共著『第2版 実務コンメンタール労働基準法・労働契約法』労務行政研究所
2020年03月 令和2年3月31日現在

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