従業員から未払いの残業代を請求された時の対応
会社の従業員から未払いの残業代の請求を受けたときに、どのような対応をすることができるでしょうか。まずは、従業員が請求してきた未払いの残業代が、本当に正しいものであるのかを確認することが重要です。
従業員が残業としている作業が、残業の対象でないこともあります。残業を禁止している会社である場合や、残業する場合には上司の許可がいるものの、その許可を取らずに作業をしていた場合には、残業代が支払われないと主張することはできるでしょう。もっとも、業務時間以内に対処することのできないほどの業務量を課したり、業務時間外に作業をすることを知りつつも、何も言わない場合には、会社が「黙示の命令」を課したとして残業代を支払わなければならなくことがあることに注意してください。
また、残業代債権が時効により消滅していることもあります。時効により消滅する(消滅時効)というのは、債権を自己が行使できることを知っていながらも数年放置していた場合に、債権が消滅することを意味します。残業代債権が消滅時効にかかり消滅していることもあります。以前は、残業代債権は1年で消滅時効にかかっていましたが、民法が改正されたことに伴い、残業代債権の消滅時効は5年に延長されました。
さらに、管理職に対しては残業を支払う義務が会社にないこともあります。法律上、管理職は監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者(管理監督者)であり、管理監督者がここでの管理職にあたります。このように、一般的な管理職よりも狭く定義づけられており、法律上管理監督者であると言えるためには、経営者と一体となって会社経営に関わっていること、出退勤の裁量が広く労務管理を受けていないこと、立場に見合った給与を受け取っていることなどが条件になります。
残業代を請求されたときには、実際に会社の側から残業代を割り出すのがもっとも手っ取り早い方法でしょう。これで、従業員により請求された未払いの残業代が一致していたら、支払うしかないでしょう。また、ある従業員の行為が残業に含まれるか否か決着し難いこともあります。例えば職場での仮眠がその例であります。実際に職場での仮眠が裁判で争われたケースもあり、会社側が負けることもあります。このように、残業に入るかグレーゾーンの場合には、弁護士に相談することが有意義になります。
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