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賃料増額・減額/弁護士 熊谷 博幸

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賃料増額・減額

賃貸借契約については、民法601条以下に規定があります。そして、賃貸借契約は、合意により成立する契約ですが、合意の内容については、平成29年法律第44号による改正後の民法の601条によると、「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了した時に返還すること」とされています。賃貸借契約の成立においては、「その賃料を支払うこと」としか規定されておらず、賃料の額についての合意が必要であるかについては争いがありますが、少なくとも、賃料の額について合意があるならば、賃料の額についても契約の内容となります。すると、一度契約の内容となった以上は、更改契約(民法513条)をするなど、両当事者の合意がない限りは、賃料についても増額や減額などの変更ができないのが原則です。

 

もっとも、民法上には例外も規定されています。一例として、民法611条があります。これは、上記の改正後の民法611条1項によると、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」とされています。民法611条1項は、上記の改正により、規定が変わった条文の一つであるが、これは、改正前は、使用収益が一部において不能となったとしても、賃借人が請求しなければ賃料は減額されなかったが、賃料は、賃借人が目的物の使用収益をすることができることの対価であることから、使用収益ができない以上は当然に賃料が減額されるとするのが合理的であるため、改正後においては、当然に減額されるものとしたものです。なお、ここでいう「債務者の責めに帰することができない事由」については、上記の改正前は、故意または過失があるかどうか、すなわち、無過失であるかどうかで判断するという見解が有力でしたが、上記の改正後においては、契約当事者の主観的意思のみによって定まるのではなく、当該契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の事情をも考慮して、ある事由が賃借人の負担とすべきことが契約の内容を解釈して、契約から読み取れるかどうかで判断するとする見解も有力です(上記改正後の民法415条1項ただし書参照)。


また、借地契約については、借地借家法が適用され、そのため、同法11条1項による、相当な価格に賃料を増減させるための規定があり、借家契約においても、同法32条により、おおむね同様の規定があります。

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弁護士 熊谷 博幸 (くまがい ひろゆき)
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共著『詳解 働き方改革関連法』労働開発研究会 2019年7月

共著『第2版 実務コンメンタール労働基準法・労働契約法』労務行政研究所
2020年03月 令和2年3月31日現在

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