立ち退き交渉
何ら契約をしていないにもかかわらず、土地や建物について占拠されているという様な場合については、その土地や建物の所有者は、所有権に基づく妨害排除としての不動産明渡請求権を行使することができます。したがって、立ち退きについて、特に交渉をすることなく、請求をすることができることになります。
これに対し、賃貸借契約などを締結している場合で、契約を終了させ、立ち退きをさせたいという場合には、同じようにはいきません。特に、借地契約や借家契約においては、借地借家法という法律が適用されまず。借地の場合には、存続期間の満了後、土地を使用している者が土地の使用を継続している場合には、貸主が遅滞なく異議を申し立てない限り、契約が更新されたものとみなされます。(借地借家法5条2項、3項)。
借家の場合は、存続期間に定めがある場合は、期間満了前に更新拒絶通知をし、賃借人の期間満了後の使用継続に対し遅滞なく異議を述べるということをしない限り、契約が更新されたものとみなされ(借地借家法26条1項、2項、3項)、期間の定めがない場合は、解約申入れをし、その日から6か月が経過した後も建物の使用継続がある場合、貸主は遅滞なく異議を述べない限り、契約が更新されたものとみなされます(借地借家法27条1項、2項、26条2項、3項)。なお、借地の場合は、存続期間の定めがなくても、法律上30年とされるため、必ず存続期間があることになります。
そして、更新拒絶や、借地においては遅滞なき異議を申し立てる場合、借家においては解約申入れの場合、正当事由が要求されます(借地借家法6条、28条)。この正当事由については、借地借家法6条、28条に具体的な評価の根拠となる事実が挙げられています。この中には、「建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は、建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合」というものがあり、これがいわゆる立退料に当たります。もっとも、立退料については、他の正当事由を補完するものとされており、また、裁判においては、賃貸人の申し出た金額よりも高い立退料と引換えに明渡を命ずることもできるとした判例があるため、注意が必要です。